チョコレート嚢胞の手術をした話④
≪産婦人科受診からオペ決定まで≫
こういった流れで、能天気お気楽おねいさんこと私が、ついに婦人科の受診予約を取った。
本当は9月中に受診したかったのだが、
「子宮内膜症かどうか診てほしい」と相談したところ、「生理中に来てください」との返答があり、10月となったのだ。
触診とエコーが気持ち悪くて、 あの椅子にはできれば二度と座りたくないと思った。 地獄の椅子じゃ……(これは座ったことのある者にしか分からない悲しみの感想です)。
このときばかりは面識のない先生にお願いしてよかったと心底思った。
エコーを撮った結果、右の卵巣が34mmに肥大していて、 左は普通。
子宮内膜症のうちのチョコレート嚢胞だねと言われた。
つまり、子宮内膜組織が普通以上にどんどん増えている(しかも子宮の中じゃなくてなぜか卵巣で)状態。
さらに 生理が来ると、経血が卵巣にたまってしまい、排出できずに嚢腫となる。子宮の中なら経血として排出できるが、それができない。
極端に言えば、生理そのものを止めれば卵巣に血が行くことはなくなる。
なるほど、生理中に受診してと言われたのは、肥大しているときの正確な大きさが分かるからか。
大学の講義は大半忘れてしまったが、病態学か生理学か、 何かで聞いてその衝撃的なネーミングと写真の気持ち悪さだけは覚 えていた。
大きさとしては小さい方。まったくもって、即手術とはならない。
ジエノゲストを飲み始めると、生理が来なくなって、 それはそれは快適だった。
ナプキンを持ち歩く必要もないし、
血を見なくていいし、
ぺたぺた、どろどろ、ぬるぬるした血液がもたらす肌の不快感もないし、
腰もお腹も痛くないし、
気分のムラもないし、
汚れたときの下着やパジャマやシーツを洗う憂鬱さがない。
生理を心配することが何にもなくなった。
正直サイコ〜だな。
これがスタンダードな生物であれと何度思ったことか。
ただ、生理ガッツリ止めてるって、女としてそれはどうなんだ? という気持ちは、病気なので仕方なし……と、 片隅に追いやっていた。
ここで処方された薬の話をしますと……
ジエノゲストは黄体ホルモンの成分でできた薬で、 ピルではない。
通常、 黄体ホルモンが放出された後に減少するのを認識して生理が始まる。ジエノゲストを毎日飲む=黄体ホルモンを直接体にぶち込み続けるので、体内の黄体ホルモンがなかなか減らず、生理が始まらない。
だからもちろん飲むのをやめれば、生理が再開される。ふつうピルにはつきものの血栓塞栓症の副作用もない。手術前後の休薬もいらない。
ピルと比較して、 長期内服しても副作用のリスクは少ないので、 何年も飲む方もいるとのこと。
それを、5ヶ月内服した。サイズは変わらなかった。大きくなっていないだけでもよし。
その後の外来受診を経て、がん化や不妊のリスクを考慮してオペをする選択肢をとった。
これは、先生と相談してどちらかというと自分の意見を通した。
先生は、 妊娠の予定がなければしばらくは薬だけでいいと考えていただろ う。数年単位の話だ。結婚の予定は、妊娠の予定は、と何度も聞かれた。
先生の経験上、オペに最もよいとするタイミングがあるのは分かる。 再発率が高いのなら、 まだサイズの小さいうちから無駄に手術の回数を増やす必要はないのも分か る。やる度に正常組織が減るのだから。
ただ私は、普段は楽観的ではあるが、 この爆弾を抱え続けるだけのメンタルを持ち合わせていなかった。
早くこれを無くしてしまいたい、その気持ちだけだった。
オペ自体は1時間ほど。腹腔鏡下で、全身麻酔。 入院は1週間ほど。
下腹部の3箇所とへそを5mmほど切って、 そこから器具を使って卵巣組織の内側の増えてはいけない組織だけ取る。 正常組織は残せるが、再発率は高いのでリオペ(再手術)の可能性も十分にある。
ジエノゲストに関しては、オペ前後で休薬する必要はなく、 オペ後も最低半年間は飲み続けることを説明された。医師からは、妊娠するまでは飲むことをお勧めされた。
そして、職場へオペが決定したことを報告し、休みの申請をした。